新聞の紹介記事を見て興味をもった「鳥文斎栄之(ちょうぶんさい えいし)展」を見に、千葉市美術館に出かけました。
このところデザインの取材のために平安時代に没入する時間が多かったのですが、この日はすっかり江戸時代の雰囲気に浸ることに。
鳥文斎栄之は江戸時代、旗本つまり武家から転向した異色の画家です。
将軍家に直接仕える官僚の「旗本」にはたくさんの職種があり、鳥文斎栄之 は江戸城本丸で将軍の身の回りの物事を司る「小納戸」に属していました。
ん?「小納戸」って何する人ぞ?と調べた職種を挙げていくと、分かりやすいところでは「御膳番」「御髪月代」「御庭方」「御馬方」「御鷹方」などなど。で、鳥文斎栄之はそのうちの「絵具方」で狩野派の画家から絵も学んでいました。
人脈や環境に恵まれた画家としてキャリアをスタートした彼は、上流階級の日常を知る者ならではの描写力と洗練された画風、前職でのノウハウを活かした上質な画材をつかい、順調に実績を積み上げていきます。
展示会場には国内外から多くの版画と肉筆画がありますが、構図も何もかもがすっきり整理され一貫してモダンな雰囲気。
うんとたくさんの作品が海外へ流出したそうですが、今回里帰りした画は誰がみても品を感じるような静かな力があります。
そしていずれも色使いが美しく、展示後半の肉筆画は特に良い画材がたっぷり使われ、殊に赤は目が覚めるな力強さでした。
展示会は3月3日まで。一点一点に丁寧な解説があり充実した内容のため、興味のある方は滞在時間を2~3時間ほど見積もっておくことをお勧めします。
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会期:2024年3月6日(水)~12日(火)
会場:日本橋三越本館 1F アクセサリーイベントスペース