監督はマルタ・アルゲリッチの三女ステファニー・アルゲリッチ。
原題はそのステファニーのことを父がそう呼ぶという「BLOODY DAUGHTER」です。
映画は面白かったです。
特に筋書きもないドキュメンタリー映画、喋りが筋書きみたいなものなのに、マルタの喋らなさが面白い。
ホームビデオや昔の映像、写真のコラージュに混じって挟まれる、ステファニーのマルタへの質問。
軽く5~6秒黙ったのちに「言葉で表せないわ」とか「よくわからないわ」という答えがほとんど。
比較的饒舌に語るのは音楽の事のみ。
インタビュー嫌いとかインタビュー泣かせとか、よく言われますが、実の娘にこれですもの。無理もない。
でも、器用に自分を語る人の多い昨今、曖昧なままにすることを恐れない彼女の態度が新鮮でした。そして、百の言葉よりも、あの笑顔のほうが素敵。
映画の中で、マルタ自身が彼女の若いころの演奏を「フレッシュでクリスピー」だと表現していました。
なるほど、クリスピーとはよく当てはまる表現!