昨年亡くなった石井好子さんの古いエッセイ本『いつも異国の空の下』の、アルベルト・ジャコメッティの章を読んで、涙。
電車の中でこういうのは、とても困る。
”アーティスト”という生き方があるとすれば、それは多分こういうものだなと思いながら読んだ。
追求に真摯なあまりに、たいてい壮絶な人生の過程で、買い手のつく何かを生んで切り売りすることで、本人は追求を続けられるという仕組み。
本当の価値は本人の生き様であり、そして多分苦労しながら、時に拒絶されてもなお、信じて支える、少しの身近な人たちにあるのだと思える。
ところで石井好子さんの文体は聡明でとても好き。
今回泣かされたジャコメッティの章でも、「とても(彼の素晴らしさを)私の文章では表しきれない」とあるけれど、おそらく伝えたかったであろう部分が、ストレートに入ってきました。