似たような展示会を何度も見ているものの、やっぱり何か新しい発見を求めて足を運んでしまうテーマです。
現代性の芽と工芸の最後の輝きが奇跡的にシンクロした、アールデコ時代。
そのアールデコ時代のビーズのドレスが今回、充実していました。
生地の薄さとビーズの重さのバランスが良くないものが多い中、とても素敵だったのがシャネルのカメリア模様のビーズドレス。
ものすごく手が込んでいるのに、存在がとても自然でした。
須賀敦子さんが『アスフォデロの野をわたって』でギリシャ神殿を評したことばを引用します。
・・(前略)・・完全なものがいつもそうであるように、しばらくのあいだはその偉大な調和がかもしだす静謐が、ほとんど人間の手を経ることなくそこに存在していると思わせるほど巧妙な錯覚の網で私をすっぽりと包み込んだ。
まさにこれ!後世に残っても古びない、本物を包むオーラ。
それにしても、18世紀から19世紀にかけては、あちこちを膨らませたり、詰めたり、着衣の身体を改造する数々の流行はめまぐるしいものがあります。
その大がかりな装置(!)から考えると、現代の流行なんて可愛らしいもの。
今は自動車のイメージの強いプジョーも、当時は鯨骨でクリノリンを作っていた時代です。
ところで今回の新しい発見は、モスリン生地について。
展示会のパネルで、イギリス産のモスリンが大流行しフランスとの間の貿易摩擦の原因となった、と説明がされていましたが、イギリス産な訳がないぞ、と思って帰宅後調べたところ、アジアの植民地で生産されていたようです。モスリンという名前の由来も西アジアの都市に由来するとか。
薄い羽根のような真っ白な木綿のモスリンを何重にも重ねて作られたドレス、素敵でした。
流行アイテムなので真冬の厳寒期でも無理をして着る人が続出したというストーリーも面白くて。
展示会は文化学園服飾博物館にて、6月12日まで。