ひとりの人間が一生のうちに手に入れるものの中には、人間よりも寿命の長いものが、たくさんあります。
今日打ち合わせしたお客さま、着物を誂えるということに関して、こんなことをおっしゃっていました。
例えば母が思いをもって誂えた着物。
いくら頻繁に着ても、いいものは美しく古びて、形を変えて使えて、決して廃れない。
だから、娘が引き取って着る。孫娘が受け継いで着る。
受け継いだほうは、誂えたひとりの女性の思いや、着姿の記憶まで一緒に受け継ぐ。
着物を誂えるということはそういうこと。
・・・思いは熱く、でも自分がされて嫌な勧め方をしない、というポリシーを持つ表参道「染一会」(そめいちえ)の野村さんでした。
写真は、ふと目が留まった夏ものの反物。
シルクの、凹凸のある織りに、手染めで柄が展開されたもの。凹凸があるので「勾配」、それじゃ面白くないというので「絹紅梅」というそうです。
ちなみにちょっと良いジャケットくらいの価格でした。
ジャケットが5年も経つとパターンが古くなって着られなくなることを考えると、値頃感たっぷりです。