銀座ミキモトホールにて。
渡辺八重子さん所蔵の着物や、端布を使ったちいさな袋もの類の展示会。
壁面の華やかな着物をひととおりみたあと、
ある帯に、同行していたパートナーと「これイイね!」と盛り上がりました。
紗のモアレが水面のような地に、一見それとは分かりにくいアメンボが、さりげなく刺繍されています。
今年の新作だと言われても不思議のない、モダンな空間表現。
そのうちすすーっと渡辺さんが隣にいらして、こんな風に帯の由来を教えて下さいました。
これは祖母が、松屋呉服店(今の松屋)から求めたもの。
当時の”売れ筋”とは違う、職人のアイデアが形になったちょっと変わった意匠。
当時はパトロンのような客が多く、「職人には絶対に恥をかかせちゃいけない」という考えがあった。
だから「こんなのが出来ました」と持ってこられたら、「いいわね」といって求める、その繰り返しが結果的に職人を育てる文化だった。・・・というもの。
使われた跡のないその帯は一世紀を超えて、作った人と求めた人のストーリーを伝えています。