服飾史上のアイコンになっているポールポワレに比べ、
フォルチュニーデザインの服を見る機会があまりないので、目黒の庭園美術館へ。
疲れる前に見終わるちょうど良い規模、展示会のテーマも好みで、よく訪れる美術館。
今回の展示内容は特に館の雰囲気に合っていて、居心地がいい。
落とした照明が、館に住人がいる時代にタイムトリップしたみたいで素敵。
デルフォス、と名づけられたドレスは、泉のような神殿のような、神々しい存在感。
身体のラインがはっきり出過ぎるため、室内着として纏われていたとか。
確かに細かい縦のプリーツは、身体の凹凸をゆるやかに強調する。
マネキンは「コルセット着用補正体型」タイプと、「ナチュラル体型」タイプが混在していて、
社会に認められた価値観と、新しい価値観の狭間を揺れ動く、当時の女性たちを象徴しているようにみえる。
フォルチュニーはスペイン生まれ、ベネツィアを拠点に活躍したデザイナーだそう。
東洋のテイストを取り入れた、今でも十分に新鮮なスタイルは、ベネツィアの古い建造物のイメージと重なる。
帰宅後見直してみた『世界服飾史』の本によると、
プルーストは『失われた時を求めて』の中で、デルフォスドレスに触れているらしい。
もう一度、読み返してみよう。
写真は美術館入り口にいつも変わらず出迎えてくれる、よく見ると親子の獅子。